概要
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川原礫氏のライトノベルが原作のアニメ。
かなりの人気シリーズであり、映画、ゲーム、マンガetc…と幅広いメディアミックスが展開されている。
現在、アニメ3期がアリシゼーション編4部作として進行中。
なお、本レビューではアニメ1期のみを対象とする。
人に勧められるか?
★★★★☆ (5点中4点)
ストーリーと設定の優秀さ。ただし主人公・キリトのキャラブレが気になる。
ストーリーと、それ以上に設定がかなりおもしろい。
ジャンルは俺TUEEEに分類されるので、好みは分かれるところかも知れないが…概ね、王道チックなストーリーが下敷きになっているのが大きいと思う。
反面、主人公であるキリトの行動や考え方にブレ…キャラクター性に一貫性がないように見えるシーンがわりと散見されるため、不可解に見えるところも多い。
加えて、描写に不可解なものもいくつかある。
良作ではあるのだが、手放しでは勧めにくいアニメ。
ストーリー
ストーリーは大きく前半と後半に分かれる。
前半は「ソードアート・オンライン」というゲームで、クリアするまでログアウト不可、ゲーム内での死=現実での死という状況で、攻略を進めるキリトと、キャラクターたちの様子が描かれる。
後半は「アルヴヘイム・オンライン」というゲームで、目覚めないアスナを探してキリトが奮闘する様子が描かれる。
ひとつづりのこのアニメだが、こう書くと前半と後半でその内容は全然違っていることが分かる。
だがまぁこれは評価するにあたってはなにも問題にはならない。
もっと着目すべき強みと欠点がある。
ストーリーも十分におもしろいのだが、なにより着目したいのは設定である。
本作では近未来の時代設定であるため、少々SFチックな設定やワードが多く…特にIT方面でその色が強い。
オリジナルのワードが多い現実感のないSFと比べ、身近に転がってるワードが多いため、リアリティが高いのである。
とはいえ、それでも現実離れしてる感はかなりあるが、IT方面に興味がある&知識があるとかなり楽しめるはずだ。
これはアニメ1期に止まらず、このシリーズに共通していることでもある。
ちなみに、ストーリーは(サイドストーリーが多いが)そういった設定を下敷きに主人公が活躍する王道なストーリーで、分かりやすくそしておもしろい。
一方で、欠点について。
ひとつが、主人公であるキリトの行動や考え方に一貫性がないこと、その結果、キリトのキャラクター性が薄くなってることである。
こう書くとファンに怒られるので、根拠となる具体例をいくつか書こう。
圏内殺人事件の時、「未知の方法による圏内殺人はフェアネスに欠ける」と言っていた。
ところが、リズベットが「落ちた人が絶対に脱出できない落とし穴かも知れない」と言った時には「そうかもな」と素直に認めてしまっている。
もし「ソードアート・オンライン=フェアネスを貫くゲーム」であり、そう考えているのであれば、キリトはリズベットの発言を否定するのが自然だ。
とても違和感のあるシーンである。
まだある。
キリトは基本的にソロでゲーム攻略に挑み、パーティを組んだりギルドに入ることを好まない。
前半の終わりごろ、アスナに「なぜギルドに入らないのか?」という質問をされ、以前ギルドに入った時(第3話)のトラブルについて語る。
だが、これはおかしい。
キリトは第1話で、クラインに誘われた時、すでにギルドに入ることをためらうそぶりを見せていた。
つまり、アスナに語った理由の他に、ギルドに入りたくないなんらかの理由があるはずである。
だが、作中ではそういった話は描かれない。
まさかアイテム分配で揉めるのが嫌、というだけではないだろう。
こういったキリトの考え方や行動、キャラクター性に違和感がある描写については、あげるとキリがない。
結果として、キリトのキャラクター性がない…分かりやすくいうと「この時、このキャラはこういう発言、行動をするんだろうな」という想像がしにくい、ということだ。
一応補足すると、キャラクター性に一貫性があるとはどういうことか…というと、近いところでは「魔法科高校の劣等生」の主人公、司波達也が分かりやすい。
見比べれば、その違いは明らかである。
ふたつめの欠点が、不可解な描写である。
特に後半の「アルヴヘイム・オンライン」が顕著。
ひとつが、キリトが「アルヴヘイム・オンライン」に初めてログインした直後。
なんらかの原因により、シルフ領のスイルベーン近くに転移してしまうのだが、この原因についてはまったく描かれない。
ふたつめが、ユージーン将軍との決闘シーン。
「アルヴヘイム・オンライン」では二刀流スキルは使えないはずだが、明らかに二刀流で戦っている。
システム的には装備できないか、あるいは武器を持てるがダメージは入らないという状況になるのが自然だ。
だが、明らかにダメージが入っている描写であり、設定的に矛盾している。
こういった不自然だったり、謎の描写が散見されるのだ。
欠点として挙げた「キリトのキャラクター性」、「不可解な描写」のいずれも、キリトをその場で最もカッコよく見せることを追求しすぎた結果の、負の面であるように見える。
主人公がカッコよければなんでもいい、それが最優先…という描き方に違和感を持つと、このアニメはかなり評価が落ちる。
これが手放しでは勧めにくい理由である。
演出
演出はかなり優秀。
バーチャル世界らしさを感じられる(映画マトリックスっぽいけど)描写が多い。
1人称視点の描写など世界観のイメージ維持のキモは抑えてるので、らしさを感じられるのだ。
個人的に気に入ってるのは、ログインの時の演出。
ちょっとレトロ感も感じられる描写なのがポイント。
音楽
OP、EDともさすがアニプレックスというべきか、質の高い曲を使ってる。
特に、前半OPのLiSAの曲がいい。
加えて、劇伴も優秀。
ここぞという場面で印象的な曲を使っているので、曲を聞くとシーンがちゃんと思い浮かぶ。
個人的に刺さったシーン
ひとつは、初めて二刀流スキルを使用するシーン。
これぞ、俺TUEEEだなと感じられるシーンである。
次が、アスナが調味料の説明をするシーン。
アスナの料理に対するこだわりを存分に感じられ、アスナというキャラクターのらしさが如実に現れてて好きだ。
まとめ
細々と気になるところはあるものの、ストーリー描写と演出とで抑えるところは抑えているので、全体的なクオリティは高い。
挙げた欠点については、ストーリーと演出でかなり緩和されている(嫌な言い方をすればごまかせている)し、好みの問題というレベルに近いので、まぁ野暮なのかもしれない。
細かいことを気にしない人であれば、十分に楽しめるアニメだろう。