概要
公式ページ:
TVアニメ「落第騎士の英雄譚」公式サイト
原作は未完で、刊行中。
いわゆる石鹸枠と呼ばれるジャンルのアニメ。
石鹸枠については、ググれば出てくるのでそちらを参照のこと。
がしかし、石鹸枠の中でもかなり浮いた存在である。
ストーリー
伐刀者(ブレイザー)と呼ばれる者たちが活躍する世界と、その伐刀者を育成する破軍学園で、伐刀者として才能が皆無である黒鉄一輝が様々な伐刀者と戦っていく。
本作はライトノベルでありながら、極めて少年マンガ的な内容である。
才能に欠ける主人公が、努力によって培った伐刀者としての能力以外のスキルで、様々な伐刀者に挑みそして勝つ様は、まさに少年マンガのそれである。
そして少年マンガ的だから、熱くそして惹きつけられる。
また、本作が他の石鹸枠アニメと一線を画しているのは、ストーリーの骨組みがしっかりしているところである。
よくある石鹸枠アニメでは、ひたすら主人公がいわゆる「俺TUEEE」的な能力やストーリー展開で、矛盾やツッコミどこばかりで骨組みがまったくブレブレだったりするものである。
※視聴者がそこをほとんど気にしないか、あるいはそれを含めて好きだったりする。それがまぁ石鹸枠アニメの魅力といえばその通りである。
が、しかし、本作はちゃんと各キャラクタの人格に言及し、ストーリー展開に違和感がないようにしているのである。
例えば、主人公の黒鉄一輝は、なぜ伐刀者を目指すのか?という目的について、最初は「曽祖父の助言があったから」という理由であることが語られる。
が、終盤にて、実は「家族に対してのコンプレックス」に起因すること、そしてそれがどんなに努力しても叶わないこと…挫折が描かれる。
それを乗り越え、一輝がこれまでに得たかけがえのないものの存在に気づき、そして再び立ち上がる。
キャラクター性とは何かと考えると、それはそのキャラクターが得た経験である。
そして様々な場面で、「なぜ、その選択をするのか?」「なぜ、その行動をするのか?」「なぜ、そんな発言をするのか?」、その根拠となるものを指す。
それらを視聴者に見せることで、そのキャラクターの性格や考え方を理解することができるわけだ。
平たく言えば、そのキャラクタの過去話のことだ。
それを、このアニメでは主人公の黒鉄一輝はもちろん、何人かのキャラについて、丁寧にちゃんと描いている。
残念ながらこれをちゃんとやっていないアニメetcのコンテンツがとても多い。
数多くある石鹸枠のアニメは、特にこういった部分を放棄しているようにも見受けらえる。
だが、このアニメではそういったことをちゃんと踏まえている。
だからこそ、本作はかなり内容が充実しており、そしておもしろい。
先に書いた少年マンガ的な展開と合わされば、おもしろくないはずがない。
それでいて、ちゃんとライトノベル的なお約束…お色気展開、妙に厨二くさい技名と二つ名、そして気取った台詞回しが用意されている。
ちゃんと抑えるところは抑えているのである。
※それらが合わないというのであれば、そもそもライトノベル原作アニメが肌に合わないのと同意である。
演出
演出について、本作は特に剣や刀をカッコよく見せるための、そしてそれらに合わせたようなものが目立つ。
某マンガでも似たようなことを言っていたが、日本のアニメetcのコンテンツで刀というのはお約束である。
特に印象的なのは、OPの映像である。
とてもライトノベル原作で、美少女が何人も出てくるようなアニメには見えない。
それ以外でも、技の発動シーン、戦闘中のスキルの応酬など、より刀をカッコよく見せようという狙いがよく見て取れる。
スキルの発動という意味では、最終話の戦闘シーンが素晴らしい。
全力を出しているというのがよくよく伝わってくる、名シーンである。
音楽
OPもEDも印象的だが、特に取り上げたいのはOPである。
歌詞がちゃんと本編の内容を反映している。
「運命はこの一瞬で決まるだろう」
「Let’s Go Ahead!」
「一撃で突き破るのさ」
…などなど、本編を意識した内容になっている。
これこそ本当のアニソンだ。
個人的に刺さったシーン
いい方と悪い方でひとつずつある。
いい方というのが、先にも書いた最終回の最終決戦の戦闘シーンである。
「己の全てを賭けてこの誇り高き騎士に勝ちたいだけ!」と全力でぶつかり合う様は、もう文句なしにカッコいい。
悪い方というのが、校内選抜戦の初戦、一輝が負けそうになるシーンである。
いくら盛り上げるためとはいえ、あの人数で一輝を嘲笑するかのように「ワーストワン!」と叫ぶのは、異様でとても気持ちが悪い。
まぁだからこそ、その後で一輝がその初戦に勝つのがスカッとするわけだが。
人に勧められるか?
★★★★☆ (5点中4点)
少年マンガ的な内容であるため、基本的なストーリーは誰が見てもおもしろい。
…が、いわゆるライトノベル的な要素は人を選ぶため、なかなか人に勧めにくい面もある。
要は、勧める相手がそういうお約束要素を知ってて、かつ受け入れることができるか?がポイントになる。
自分もまったく気にならないわけではない。
とはいえ、それらを踏まえてもおもしろいのは確か。