【アニメ】「グランベルム」レビュー

概要

Webページ:
TVアニメ『グランベルム』公式サイト

 

魔法とロボットをテーマにしたオリジナルアニメ。

脚本は花田十輝先生…うーん、これが吉と出るか、凶と出るか。

 
 

人に勧められるか?

★★★★☆ (5点中4点)

設定とストーリーのツッコミどころを、演出でカバーしてる感。

 

設定とストーリーで引っかかるところがいくつもあるが、それを演出でカバー…というか、演出が強力で、かなりおもしろい。

2回、3回と見ると、その設定とストーリーの細かな点が気になってくるが、それでも十分におもしろい内容になっているのはすごい。

あとは声優の演技も力が入ってるのも見どころ。

名作というには届かないが、十分にオススメできるもの。

 
 

ストーリー

設定とストーリーはとても分かりやすい。

序盤は、魔術師とはなんの関係もなかった小日向満月が、グランベルムに巻き込まれる。

中盤で、大きな衝撃的な事実が明かされて、満月と新月が思い悩む。

終盤では、強力な敵と対峙して、満月と新月が戦う。

いわゆる三幕構成的で、おもしろさがよく分かる。

 

単純に「グランベルム」というタイトルだけを頭に、このアニメを見ていくと騙される。

「あれ、満月が主人公なんじゃなかったの?」と。

公式サイトをよく見ると、「プリンセプスのふたり」というサブタイトルが入っている。

そう、このアニメは満月と新月の2人が主人公なのだ。

文字がかなり小さいので、普通は気付かない。

そういった細かな仕掛けが、この作品にはかなり多い。

 

確かに、芯は通ったストーリーで分かりやすく、そしておもしろい。

だが、一方でツッコミどころはかなり多い。

例えばそのひとつが、九音はどうして四翠の真意に気づいたのか?だ。

四翠から九音に呼び掛けたわけでもないし、過去の回想の中でもそれを示唆する言葉はない。

姉妹の絆…のようにも見えるが、さすがにそれで説明するは超常的すぎないか。

 

ふたつめが、マギアコナトスの真意についてである。

新月は、魔力に愛された存在として、マギアコナトスにかなり寵愛されていることが語られる。

だが、新月の目的は「魔力を消し去ること」であり、つまりマギアコナトスの消滅である。

それは物語の序盤からたびたび語られるので、当然マギアコナトスも知っているはずである。

にも関わらず、マギアコナトスが新月を求めるのはおかしくないか。

マギアコナトスは、自分を消そうとしている相手を求めていることになる。

もし、意思を持たぬ動物だとすれば、それは分からないでもない。

だが、マギアコナトスは意思のようなものを持っていることが語られている。

生物として考えると、明らかにおかしい。

 

好きな相手が自分を殺すと分かってる、でも求めてしまう。

そういう作品があることも認めるが、本作はそうではないはずだし、もちろんそのことにも説明はない。

なお、この作品の視聴を勧めてきた方にそのことを指摘したら、「マギアコナトスが、新月のように魔力に愛された子を求めるのは、本能のようなものかもしれない」と言っていた。

なるほど、確かに納得がいく分析だと思う。

だが、それならば劇中でそれをきちんと説明すべきとも思う。

 

といったように、ストーリーと設定のほころびがところどころに見えてしまうため、手放しで高く評価できない…というのが、率直な感想だ。

 
 

演出

だが、そんなストーリーをカバーするように演出がかなりしっかり作り込まれている。

アンナ・フーゴの魔法の真実、満月の正体、水晶の正体…などなど、物語を盛り上げるのに十分すぎるほどだ。

特に、アンナ・フーゴの魔法の真実が語られる回と、その次の回は全体を通してもかなり盛り上がる箇所である。

って言うか、日笠さんの演技がやべぇ。

 

実を言うと、全体・細部問わず、本作はストーリーだけならけっこう単純な内容である。

逆に言えば、そんな単純なストーリーであんなにまで視聴者を引きつけるのは、それだけ演出が強力な証拠なのだ。

 

ただ、ひとつ演出で文句を言わせてもらうとすれば。

こういう魔法が中心になってストーリーが進む作品で、スマートフォンやパソコンといったテクノロジー的なツールを混ぜこぜにするのはやめた方がいいと思う。

魔法は非現実的で、テクノロジーは現実的なものだ。

スマートフォンやパソコンを出してしまうと、一気に現実感を産んでしまう。

しかも、魔法とテクノロジーをどうやって結び付けているか、そういった説明はない。

そのため、新月はどうやって満月のスマートフォンに連絡を付けたのか?マギアコナトスの空間に寧々はどうやって通信を割り込ませたのか?などなど、かなり違和感が強い。

魔法に関するものは、あくまで魔法で対処すべきと思う。

 

ちなみに、「魔法科高校の劣等生」はその辺りがうまく、魔法を逆に現実側に引き寄せるような設定や描写を盛り込んでいるので、あまり違和感がない。

まぁ、アレはアレで他にツッコミどころがあるのだけどね…。

参考:【アニメ】「魔法科高校の劣等生」レビュー | insight Animation -アニメレビューブログ-

 
 

音楽

OPとED、どちらも良曲だが、特にEDが素晴らしい。

透き通ったようなUruさんの声と、月夜を感じさせる静かな曲調が物語の終わりに流れると、しんみりと聴ける。

…まぁ、とある話数ではこれを逆手にとった演出が組まれているのだが。

本当、どこまでも強力な演出だよな!

 
 

個人的に刺さったシーン

いくつかある。

ひとつが、満月が新月に、魔力をなくして欲しいとお願いするシーン。

2人の前に立ちはだかる最大の障害について2人で会話する、本作でも見所である。

また、満月が自分の存在の意味について語るシーンでもある。

 

ふたつめが、アンナ・フーゴの魔法の真実が明かされるシーン。

やはりこのシーンと言うか、この回の演出は神がかってる。

 
 

まとめ

ストーリーや設定のおかしな箇所があるのを、演出でカバーしている作品。

それを誤魔化しているとマイナスで取るか、きちんと仕上げているとプラスで取るか。

それによって、この作品の評価は分かれると思う。

 

個人的な考えで言えば、そういうやり方はアリだとは思う…が、やはりダメなところはダメだと、きちんと評価に入れるべきと考えた。

ストーリーや設定について、少し考えたら違和感は持っただろうし、そこを潰すにはどうしたら…と考えることはできたように思う。

そこができていれば、もう文句のつけようがなかったのに。

 
 

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