【アニメ】「輪るピングドラム」レビュー

概要

公式Webページ:
輪るピングドラム

少女革命ウテナ」 を手がけた幾原邦彦氏が監督を務めたアニメ。

少女革命ウテナ」もなかなか難解なアニメだったが、本作も負けず劣らず…。

 
 

ストーリー

冠葉(かんば)と晶馬(しょうま)と陽毬(ひまり)の3人の家族が、陽毬を救うため正体不明のアイテム・ピングドラムを探す。

 

本作のテーマは「家族」だそう。

だが、最後まで見てWikipediaを見て、「テーマが『家族』である」と書かれているのを見て、「あぁ言われてみれば…」と感じる程度だった。

なぜなら、そう思ってしまうほどに設定と、家族とは関係ないストーリー展開にインパクトがありすぎるからだ。

ネタバレになってしまうのであまり深く書けないが…まず、主人公一家の境遇に特殊性がありすぎる。

両親の境遇、立場、冠葉と晶馬と陽毬の関係性、現在に至る経緯が特殊で印象が大きすぎるのだ。

 

そして、家族とは関係ない部分のストーリー展開。

ヒロイン?として苹果(りんご)が出てくるが、その少女がこれまたかなり特殊な性格をしている。

前半はほとんどこの子に関係する物語が進行するのだが、その特殊な性格によって行動がぶっ飛んでいて、そのおかげでその行動ばかりが記憶に残りやすい。

いや、よくよく考えてみれば、その苹果の家族もまた少し変わった境遇に置かれていて、その描写もまたテーマに沿っていると言われれば、あぁそうかもしれないなと感じるのだが。

 

ともあれ、そういった設定と、家族とは関係ない部分のストーリー展開がインパクトが大きすぎて、家族がテーマだということに全然気づけない。

もちろん、ピングドラムの正体、そしてなぜ「輪るピングドラム」というタイトルなのか?は、少し考えさせらえる。

これまたやはりネタバレになるので深くは書けないが、苦難や喜びを分かち合い、それが巡り巡るのが家族であり、それは尊いものだ…というメッセージなのかもしれない。

 
 

演出

テーマが家族であることの存在感を、さらに薄くしてしまっているのが、やはりインパクトが大きく、かつ優れた演出である。

キャラクターの電車移動を地下鉄の改札と駅表示で表すこと、キャラクターの回想を駅の電光掲示板で表現すること、 陽毬が帽子をかぶった時の変身?バンクなどなど、どれもとても素晴らしいと思う。

わたしにはとても思い付けそうにない。

 

その中でも特に取り上げるべきは、陽毬が帽子をかぶった時のバンクである。

これがもっとも個性的であり、かつインパクトがある。

帽子をかぶった時に「せいぞーん、せんりゃくー!」と毎回叫ぶのはインパクトがでかすぎる。

最後まで見た視聴者に「どれが記憶に残ったか?」と聞かれたら、少なからずこのことを答える視聴者がいるのではないだろうか。

 

あと、主人公たちといっしょに行動する不思議なペンギンもいい味を出している。

キャラの会話の後ろで、茶目っ気のある行動をするのだが、これが可愛らしい。

 

だがしかし、この個性的でインパクトある演出はもろ刃の剣だ。

なぜなら、これまで書いた設定、ストーリー展開、演出というインパクトのあるフィルタがかかりすぎて、ますます家族がテーマであることの存在感が薄くなっている。

これはどう考えてもメッセージ性が下がる。

もはや伝える気がないのではないか?と思われても仕方がない。

っていうより、読解力がなければ家族がテーマとは思わない可能性すらある。

 

…が、これがおそらく幾原邦彦氏の持ち味なのだろう。

少女革命ウテナ」もそうだった。

難解でテーマがまったく分からなかったし。

まぁその持ち味が人に合うかどうか?が問題である。

わたしにはたぶん合わないんだろう。

嫌いではないが、かといってわたしが「こいつは名作だ!」と思うほどかと言われれば…答えはNoだ。

 
 

音楽

このアニメは音楽もまた、素晴らしい。

主題歌はやくしまるえつこ氏、挿入歌と後期エンディングはトリプルHという劇中ユニット。

正確には、劇中に出てくるのはダブルHというユニットで、トリプルHはもしかしたら劇中でデビューしたかもしれなかった、架空に架空を重ねたユニットだ。

OPのやくしまるえつこ氏の曲が、思った以上にアニメの映像にマッチしてる。

だが、それ以上に取り上げたいのがトリプルHである。

架空に架空を重ねているというのが夢があるし、それを実現しちゃうのが視聴者心理をくすぐる。

そして、その曲はどれもARBという、原曲はいずれも男らしい骨太なロックバンドの曲のカバーなのである。

編曲でアレンジはされているが、歌詞は男らしさがあるもののまま。

それを少女たちが歌ってるというギャップがいい。

もちろん、編曲のアレンジもとてもクオリティが高くて、聴いてて飽きがこない。

 

上記のインパクトには少し負けてしまうが、coaltar of the deepersの前期エンディングもカッコいい曲である。

 
 

個人的に刺さったシーン

やはりインパクトが大きい変身?バンクと、そのあとの会話劇だろう。

陽毬の声で「とっとと奪っちまうんだよ」とか言うのは卑怯だと思う。

あと、やはり最終話のピングドラムの正体が明かされるシーンと、同時に出てくる冠葉と晶馬の回想シーンだろう。

それがピングドラムか!ってなることは間違いない。

それにしても…ピングドラムを探せって言われてあんなエンディングにたどり着くとは想像もしなかったな。

 
 

人に勧められるか

★★★☆☆ (5点中3点)

秀逸な演出、ピングドラムの正体などなど、心揺さぶられるものがかなりある。

一見の価値はあり。

…が、後世に残したい名作か?と言われると…わたしはそこまでのアニメだとは思えなかった。

 
 

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