概要
Webページ:
TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』オフィシャルサイト
長月達平氏のライトノベルが原作。
原作未完。
元々は「小説家になろう」で掲載されていたものであり、いわゆるなろう系、そして異世界転移(転生ではない)ものである。
テレビ放送1期が放送終了し、OVAという形で映像化継続中。
なお、本レビューはテレビ放送1期のみを対象とする。
人に勧められるか?
★★★★☆ (5点中4点)
ダサくてカッコいい主人公の大立ち回り。ただしウザいのがたまにキズ。
まず、なによりストーリーが素直におもしろい。
本作の主人公の唯一の能力「死に戻り」と、その性質を活かしたストーリー展開と構成がうまいと感じる。
一方で、単純な俺TUEEEではなく、適度に主人公がカッコよくて、そしてカッコ悪いのがポイント高い。
マイナス1点は、ひとつは、主人公のウザさと痛々しさが目に余るシーン、そしてキャラ性の不整合が気になる描写があること。
もうひとつは、原作未完であることもあり、未回収の伏線がかなり多いことである。
原作小説読めよということだが、アニメとして評価すると、重要な部分がかなり謎のままであるため、やはり気になる。
ストーリー
引きこもりの少年、ナツキ・スバルは、深夜のコンビニに行った帰りに、突然異世界に転移させられる。
転移した世界でナツキ・スバルは、不良に絡まれているところを白い髪の少女、サテラに助けられる。
助けてもらったお礼にサテラの探し物をいっしょに探してくうち、貧民街の盗品蔵に行き着くが、突然背後から襲われてサテラと共に命を失ってしまう。
次に目覚めた時、受けた傷はなくなっていて、サテラとはまだ出会っていないことになっていた。
ナツキ・スバルは、死ぬことで過去に戻っていたのだ。
そのことを悟ったナツキ・スバルは、サテラを救うため、奔走する。
本作のストーリーの重要なポイントは、「主人公の『死に戻り』の能力」、「『死に戻り』の能力と他キャラクターの能力の組み合わせ・チームワーク」、「主人公と他のキャラクターの関係性の変化」である。
これらを活かし、ナツキ・スバルは難局を乗り切っていく。
それぞれひとつずつでは他のコンテンツにもありそうな要素だが、この3つが組み合わさることでオリジナリティを生み出している。
まず、「主人公の『死に戻り』の能力」について。
この「死に戻り」の詳細な設定は最後まで明かされない。
なぜ、ナツキ・スバルがこの能力を使えるのか?
なぜ、この能力を使うと、魔女の臭いが強まるのか?
不明なままだ。
一方で、この「死に戻り」の能力を使うことで、試行錯誤の実行と推理ものテイストをストーリーに加えることができている。
例えば、序盤では「エミリアの探し物を取り返し、かつ生還する」という目的のため、試行錯誤を繰り返している。
そして中盤以降。
ナツキ・スバルは繰り返し試行錯誤する中で、自分の行動の結果、どういう展開・結末になるのかを知る。
そして手に入れた情報を整理し、難局を突破する。
やっていることが推理もののそれである。
自分が死んでるけど。
続いて、「『死に戻り』の能力と他キャラクターの能力の組み合わせ・チームワーク」について。
他のなろう系・異世界転生ものと一線を画しているのは、ナツキ・スバル自体は対して強くもないし、ナツキ・スバル1人ではどうすることもできない、ということに尽きる。
あまり比較に出したくはないが、例えば「魔法科高校の劣等生」や「転生したらスライムだった件」では、他のキャラも多数登場するが、見ている身からすると「これ、主人公1人いればたいていなんとかなんだろ」という印象がいつまで経っても消えない。
ところが本作では、少なくともアニメのラストのラストまで、主人公1人では状況を打破できそうにないまま終わる。
主人公は特殊な能力を持っているが、強力ではないのだ。
それがストーリーをおもしろくさせている。
最後が、「主人公と他のキャラクターの関係性の変化」について。
本作ではこういった状況や場面がかなり登場する。
「死に戻り」とその試行錯誤の過程で、行動の結果によってナツキ・スバルと敵対していたのが、友好的な関係に変化するのだ。
いや、変化させるようナツキ・スバルが試行錯誤している。
基本的には、信頼や協力関係を得るためにどうしたらいいか?を考え、行動に起こすのだが、これが「死に戻り」を繰り返すことで手に入れた情報を上手に使っている。
見ている側にも驚きがあるし、おもしろい。
これはストーリーのメインヒロインであるエミリアに対しても同じだ。
エミリアとの関係性の変化こそ、このアニメのストーリーの一番大きな根幹といってもいい。
最初、エミリアはナツキ・スバルに対し「なぜ、わたしを助けてくれるの?」という質問に対し、「前に助けられたから、その恩返しがしたい」と答える。
だが、それは「死に戻り」前の記憶であり、今のエミリアにはないものだ。
だから、エミリアは腑に落ちないし、ストーリーの過程で「それは嘘なんでしょ?」と断じてしまう。
しかし、その後の過程を経て、最後に同じ「なぜ、わたしを助けてくれるの?」という質問に対し、ナツキ・スバルは「君が好きだからだ」と答えるのだ。
この変化についての描写がもっと欲しいところ(なぜ、どのようにして変わったのか?)ではあるが、エミリアが「最初の答えではふに落ちなかったけど、最後の答えでは腑に落ちた」というのが、かなり納得のいく形で描写されている。
といったように、これら3つのポイントがうまく重なり合うことで、かなりおもしろいストーリーとして出来上がっている。
加えて、ナツキ・スバルという主人公である。
正直、最初はかなりうざいヤツだと思った。
喋り方とか行動が痛々しいし、身近にいたら嫌だなと思う。
だが、ストーリーの過程で十代後半らしい考え方(未熟さ、傲慢さ)を見せることで、かなり等身大の少年らしさを描写できている。
一方で、ストーリーでしっかりと挫折や葛藤を描写することで、人間味もある。
終盤になる頃には、ただウザいだけの主人公ではないことを感じられるはずだ(けどやっぱりウザいことには変わりない)。
好きにはなれないかもしれないが、嫌いになりきれないという印象は持てるのではないか。
ただ残念なのは、ふたつ。
ひとつは、原作未完であるため、未回収の伏線があまりに多いことだ。
かなり壮大で、長大なストーリーなので継続的に映像化して欲しいが…最後までは無理だろうなぁ。
やはり、原作ファンと原作へ引き込むためのアニメ化ということか。
もうひとつが、ナツキ・スバルというキャラクターの不整合である。
現代日本では引きこもりのゲーム三昧の日々を過ごしていた設定だが、なぜそうなったのか描写がなかった。
ストーリー上で挫折する箇所で、怠惰な日々を送っていたことを自嘲するシーンはあるが、なぜそうしていたのかは描写されない。
加えて、ナツキ・スバルは屋敷で雇って欲しいと言ったり、セリフで「意外と努力は嫌いじゃない。できないことができるようになるって悪くない」って言ったり、かなり引きこもりらしくない。
もし仮に、本当にそんな行動力と考え方を持っているのであれば、引きこもりなんかならずに学業やその他の何かで、それなりの成果を出しているのではないか。
あるいは、これ自体も「俺は頑張っているんだ」っていうアピールにすぎないうちのひとつなのか。
演出
本作で目立った演出といえば、OPとEDの入り方と、そして「死に戻り」を口にしようとしたときの描写だ。
このアニメはかなり多い頻度で、OPとEDを使用しない入り方と終わり方が使われる。
アニメ的にそのほうが盛り上がると考えてか、割り切っているのだろう。
個人的に好感を持った。
もひとつ、「死に戻り」を口にしようとしたときの描写だが、不穏な音楽と雰囲気があって、かなりうまく表現できているなと感じた。
アニメの流れ的に明らかに変調をもたらしていることがわかるので、よくこんな表現思いついたなと素直に感心した。
音楽
印象的なのは、前期OPと後期EDである。
前期OPは、そもそも曲自体がかなり強力なメロディなので、聴くとかなり印象に残りやすい。
後期EDは、キャラクターソングのようだが、印象的なシーンのバックで流れることが多く、かなり印象に残る。
アニメを見たら、どちらも繰り返し聴きたくなる。
個人的に刺さったシーン
ひとつが、ナツキ・スバルとエミリアが口論するシーン。
次が、ナツキ・スバルがレムに遠くに逃げようと提案するシーンである。
どっちも、このアニメの中で最高にナツキ・スバルがうざくて、そしてカッコ悪いシーンである。
別にカッコ悪いのが好きなのではなく、そのあとの立ち直りとのギャップがあるので印象に残っている。
加えて、最近のライトノベル原作のアニメは、やたら主人公をカッコよく見せたすぎるきらいがあって、ここまでダサさを押し出すのは珍しいなと感じたのもある。
もうひとつが、ヴィルヘルム・ヴァン・アストレアの回想シーンである。
この御仁がアニメ内でも屈指のかっこいいキャラなのだが、その回想シーンということで、かなり印象に残る。
まとめ
というわけで、最近のなろう系・異世界転生もの(これは転移だけど)の中では、一段頭が飛び抜けてる印象。
あれこれ気になるところはあるし、主人公はウザくてダサいとこあるのは気になるけど、ストーリー描写がうまいし、素直におもしろい。
気になったのであれば素直に見てみることをオススメしたい。