概要
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失われた未来を求めて
2010年に発売された、R-18美少女ゲームが原作。
なお、放送当時は作画崩壊と話題になった本作だが、本レビューでは視聴時に影響を与えるほどの作画乱れはないと判断し、レビューには加味しない。
そもそも、最近はやたら作画作画と言われて、もっと内容を見たほういいじゃないか…と煩わしく思ってる、というのが、わたしの率直な気持ちである。
ストーリー
内浜学園・天文学会に所属する秋山奏は、ある日同じく天文学会に所属し、かつ幼馴染である佐々木佳織から告白を受ける。
奏はすぐにはそれに答えられず、答えを濁してしまうが、その日の夕方、佳織は交通事故で意識不明となってしまう。
事故によって失われた、佳織の未来は取り戻せるのか?
簡潔にいうと、本作はループものである。
ひとつ変わっているのは、ループものといえばループするのが主人公である、というのが定番だが、本作では主人公である奏は一切ループをしない。
いや、ゲームの視点で考えれば奏が主人公であるのだが、アニメでは古川ゆいが第二の主人公とも言えるポジョションで扱われている。
そういう意味では、定番に外れてはいないのかもしれない。
原作ゲームは未プレイであるため、この辺りがゲームだとどういうふうに描かれているのかは分からないが。
本作はストーリーの骨組みはしっかり組めているので、十分におもしろい。
後半で、古川ゆいの正体、どうやって時空転移させるに至った経緯、どうやって転移させるのか、天文学会に置かれていた黒い箱の正体…などなど、一通りの説明がつけられている。
それが実現可能かどうかはこの際どうでもいいのだ。
ファンタジック要素の有無や内容はさておき、ちゃんと説明できていることと伏線を回収できていることのほうが重要である。
そういう意味では、ちゃんと考えられていることが分かる。
香織の事故を回避させる方法について、気になるといえば気になるが。。。
こういった場合で重要なのは、「見る側が納得感を得られるか?」ということだ。
あれこれ理由づけしたところで、結局のところファンタジーなので、納得できるかどうかは見る人によって分かれてしまう。
少なくとも、物理学に知見があまりないわたしにとっては、十分な説明だったとは感じるが、そのことを踏まえた上で判断してもらいたい。
さて、より考えるべきは「本作はスッキリとしたエンディングであるか?」ということである。
時空分岐させることとその結果について後半について説明があり、一見するとハッピーエンドに見える。
しかし、最後にゆいが事故を回避した時空については、果たしてスッキリとしたエンディングと言えるだろうか?
劇中では、「分岐したとしても結果は収束する可能性がある」と説明されている…が、分かれた2つの時空は収束された描写はない。
2つの時空をまとめて、全体的に見ればハッピーエンドと言えるとは思う。
しかし、ゆいが事故を回避した時空は、果たしてハッピーエンドなのだろうか?
あの時空単体で見れば、結局のところ何もないのだ。
2つの時空について、最終話にほぼ並行して描かれてしまったので、スッキリしないように感じてしまうのではないか?というのが、率直な印象である。
最終話で、佳織が目覚めた時空をもう少し重点的に描写していれば、少しは印象が変わったのかもしれない。
もしかしたら、制作側はメインヒロインの佳織と同じくらい、ゆいの活躍を見せたかったのかもしれないなぁ。
間違いなく、本作の主人公は奏であり、ヒロインは佳織であるのだが、ゆいは主人公でもありヒロインでもあるような、そんなポジションである。
露出量を平等にしようとしたら、ああいうストーリーになるのかな。
演出
時間軸が行ったり来たりするストーリーであるので、その辺りを違和感なく表現できてるか?がひとつの判断の分かれ目だろうか。
確かに、第一話とか、いきなり時間軸が戻ったりするのは気になりはする。
…が、他にどう表現したらよかったか?という考えは出ないので、あれがベターなのかもしれない。
ストーリーを理解するには十分な出来だと思う。
音楽
OPの佐藤聡美さんが歌う曲はいい曲だと思う…が、少々推しが強いかなぁとは感じた。
劇中でも、佐藤聡美さんの演じるキャラはオリジナルで、OP曲は劇中でもそのキャラが歌う曲として登場する。
どうやら制作側は相当に佐藤聡美さんを売り込みたかったようだ。
わたしは佐藤聡美さん好きだけどね…決して歌はうまくないとは思うが。
さて、それ以上に取り上げたいのがED曲だ。
キャラが歌う曲であること、タイトルが「明日また会えるよね」であること…と、それだけでかなり重みを感じる。
そして、歌詞も本編にリンクするような内容でとても素晴らしいと思う。
個人的に刺さったシーン
ひとつが、華宮凪沙が奏に「俺たちがいます」と言われて、泣くシーンである。
特に凪沙が好きというわけではないのだが、あのシーンだけで「凪沙、かわいいなぁ」と思ってしまう。
単純なもんだ、けど仕方ない。
ふたつめが、佳織が奏に告白するシーンである。
時間軸が複数回描かれるため、実は告白も複数回ある。
しかし、どれも可愛らしくて、いじらしい。
奏が好きだという気持ちが伝わってくるし、いちいち仕草が可愛い。
そんな彼女が奏に「もうただの幼馴染みじゃ嫌なの」と告白するシーンはいい。
みっつめが、ゆいが最後に奏に別れを告げるシーンだ。
この回では、ゆいが「自分は奏が好きなのか?」という気持ちと、「自分の使命と、使命を果たした後の宿命」の中でかなり揺れる話である。
このアニメの一番盛り上がる回でもあり、そのラストはグッとくるものがある。
人に勧められるか?
★★★☆☆ (5点中3点)
全体的にはおもしろいのだが、やはりスッキリしないエンディングが気になる。
いい作品ではあるのだが、オススメできるか?と言われるととても悩ましい。
他に良作がいくらでもあるので、そちらを勧めてしまう、という表現がしっくりくる。
ただ、気になったので見てみたいということであれば、十分楽しめると思う。
あと、ヒロインの佳織ちゃんがとにかく可愛くていじらしい。