概要
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アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」
※アニメ1期、2期、新編集版、劇場版共通
1期レビュー:
【アニメ】「PSYCHO-PASS」レビュー
シリーズ2作目。
1期の続きではあるが、新編集版の内容を踏襲してる。
人に勧められるか?
★★★☆☆ (5点中3点)
前作とはおもしろさのベクトルが違う。勢いは落ちたか。
文句なく勧められた1期と比べると、ところどころ気になる部分があるため、ストーリーの完成度が一枚落ちるのがひとつ。
加えて、話のベクトルがちょっと変わってしまい、ストーリーの内容の難しさが上がってしまったのがひとつ。
個人的には、これはこれで好きなのだが、勧めやすいかと言われると…というところ。
1期を踏まえての、みんなが求めてた2期ってこれかなぁ?という疑問もあるかな。
ストーリー
引き続き監視官を務める常守朱だが、ある事件に出くわす。
その事件の捜査の過程で、監視官が1人失踪。
また、その事件の人質女性が、サイマネティックスキャンにも引っかからなかった、いわゆる存在しない人間だったことが発覚。
さらに、事件現場に残された、謎のメッセージ。
それらは、公安局刑事課を揺るがす、大きな事件の始まりにすぎなかったのだった。
1期は分かりやすいストーリー構造をしていたが、2期では少々複雑になっている。
ネタバレを避けるため言及はしないが、前作の槙島聖護のような分かりやすい敵が1人いるわけではないのだ。
加えて、対立構造が複雑である。
一方で、1期の槙島聖護は敵キャラであるのに魅力的な人物だったが、2期の敵は少々小物感と、どちらかといえば化物的な雰囲気がある。
それらにより、複雑さとミステリ感が2期のストーリーの特徴である。
狡噛慎也と槙島聖護の対立という分かりやすくおもしろいストーリーの特徴があった1期と全然違う。
個人的にはこれはこれで好みであるし、おもしろいとは思う。
…が、1期と比べるとツッコミどころがあるのは確かだ。
まず1つが、鹿矛囲桐斗が発した「彼はまだ救えた」というセリフと、その背景である。
ここで言ってる彼とは、最初の事件の犯人である。
その犯人は、犯罪係数が300付近であるため、余裕で執行対象だ。
鹿矛囲桐斗がいう救うが、命を救うか社会的に救うかで多少変わるが、犯罪係数を大幅に下げられるということがストーリーで大きな役割を持つため、おそらく社会的に救うということだと考えられる。
だが、そうだとするとおかしなことになる。
この世界で、犯罪者=犯罪係数が100以上であることだ。
そして、鹿矛囲桐斗は犯罪係数を執行対象外にまで大幅に下げることが可能だ。
だが、それでは犯罪係数は意味をなさず、何を持って犯罪者と判断するか?という話になり、シビュラによる判定は意味をなさないことになる。
そうなれば、槙島聖護の時に常守朱が言っていたように、「以前の裁判制度を復活させるしかない」ということになる。
だが、爆発物を所持し、公安から逃走したということは、現在の法に照らし合わせれば明らかに違法である。
であれば、結局は社会的に救うことにはならない。
つまり、命を救えたとしても、社会的に救えたとしても、その彼はもう詰んでいるのだ。
鹿矛囲桐斗がそういう想定をしていなかったのであれば説明はつくが、あのような犯罪を犯す知能犯がそんな想定をしていないとはちょっと考えにくい。
したがって、鹿矛囲桐斗が言う「彼はまだ救えた」には違和感がある。
続いて、鹿矛囲桐斗が大幅に犯罪係数を下げることができる能力を持っている点だ。
劇中では、高度な医療スキルを持っているとだけ説明されるが、彼がどうやってそこまでのスキルを身につけたのか説明はされない。
スキルなのか才能なのか…これは本編でも某人物に対し発せられる言葉だが、鹿矛囲桐斗のそれには疑問が残る。
もしスキルだとしたら、どうやって身に付けたのかまったく不可解だ。
そんなことが可能なのであれば、シビュラシステムによって成り立つこの社会がまったく意味をなさなくなる。
そんな事実は誰にも知られず隠匿されたまま、鹿矛囲桐斗が手に入れたとは不自然だ。
一方で、才能だとしたら…これはこれで説明はつくが、強引さは残る。
薬の調合内容を個人に合わせて変えることで可能だとのことだが、そんな事実に誰も他に気付かないということが、ありうるのだろうか?
最後が、東金朔夜の存在だ。
観測史上最高値の犯罪係数を叩き出したと説明されているが、なぜそんな人物がいまだに存命なのか。
300越えの時点でエリミネーターが作動するのではなかったか。
東金財団が絡んでいるのかもしれないが、そんな人物が公安局刑事課に所属できるとはおかしくないか。
経歴と合わせて、おそらく偽装されていたのだろうが、とはいえ少なくとも常守朱がそのことにツッコミを入れないのは不自然である。
といったように、それ以外にもいくつかどうにも強引な部分があるので、どうにも一期と比べるとなぁ…というところだ。
個人的にはその他にも、常守朱が霜月美佳に対しての印象や考えを語る場面がないのも気になる。
どこかに入れてもよかったのでは。
とはいえ、それでも十分におもしろい。
序盤で、犯罪係数が高い犯人に対し、
いいえ、あなたも社会に必要な存在よ。社会が必ず正しいわけじゃない。だからこそ、正しく生きなければならない。社会は一人一人が集まって作られるもの。あなたが正しくあることが、社会を正しくすることでもある
と常守朱が言う場面があるが、今後の展開を予想させる一言が入ってるのもさすがだ。
まぁ、これが結末に対しての答えじゃんって言われれば、そりゃそーだなとしか言えないのだが。
演出
1期に引き続き、派手な演出はなし。
相変わらずドミネーターがカッコいい。
あとは、1期を踏まえた常守朱の成長の証として、常守朱の思考中に狡噛慎也が登場することだ。
2期でも引き続き、1期での成長の成果が現れてるという証でもある。
それにしても、このアニメは人物Aを人物Bにダブらせる…という演出が好きだな。
ちなみに、1期のストーリーを踏まえて、とある場面で、常守朱が「法は守らなければならない」という信念を崩してないことを表現する方法として登場する。
音楽
OPの凛として時雨、EDのEGOISTの起用は相変わらずだが、やはりストーリーの雰囲気にあっていてよい。
凛として時雨の曲は、1期と比べて攻撃的な感じはしないのだが、1期とのストーリー的な落差を考えれば、ちょうどいい塩梅なのかも。
なお、敵と対面したときなどに時々流れる、クラシック調の曲が印象的なのをはじめとして、劇伴もとてもいい味を出している。
個人的に刺さったシーン
ひとつは、第一話で爆弾犯を追い詰めるシーン。
犯人と常守朱の会話の内容が印象的なのもあって、個人的に好きなシーンだ。
その内容の一部が、上記の常守朱のセリフである。
シビュラシステムによってサイコパスが計測され、その数値によって扱いが変わるこの世界で、常守朱がどう考えているかが感じ取れる場面でもある。
まとめ
というわけで、十分完成度は高くおもしろいのだが、1期と比べるとなぁ…と感じてしまう、といったところ。
十分に勧められる内容なのだが、話の難解度が上がってるので、好みは分かれそうだ。
そのため、1期以上に勧める相手を選びそうだ。
個人的には、話の方向性的にも、内容的にも攻殻機動隊S.A.Cと少々かぶる。
攻殻機動隊S.A.Cが好きだったら、ハマるかもしれない。