概要
Webページ:
機動戦士ガンダム 第08MS小隊 公式サイト
ガンダムシリーズのOVA。
「機動戦士ガンダム」から続く宇宙世紀を物語の舞台にしており、一年戦争での地球でのできごとを描いている。
続編「ラスト・リゾート」と劇場版総集編「ミラーズ・リポート」も制作されている。
人に勧められるか?
★★★☆☆ (5点中3点)
理想と現実のギャップが異様なまでに浮き出てる。シロー・アマダに感情移入できるかどうか。
戦時中のリアルな状況描写に対して、シローとアイナの理想論チックな行動と発言がすごく浮いて見える。
シローの目指したもの、目指した結果としてシローがたどり着いた結論…といった描写が弱く、シローの理想論が投げっぱなしで終わったようにも見える。
そんな理想論を突っ走る後半のシローを好きになれるかどうか…で好き嫌いが分かれそう。
一方で、陸戦型ガンダムの重厚な戦闘シーンは素晴らしい。
ストーリー
連邦軍のシロー・アマダとジオン軍のアイナ・サハリンの、敵と味方という壁を超えた愛と相互理解が主に描かれる。
序盤の内容は主に2つ。
シローの作戦実行中の様子、そして2回(宇宙、雪山)のシローとアイナの遭難である。
後半は、相互理解できたことで理想に突っ走るシローとアイナが描かれる。
いろいろ気になるところはあるが、大きく気になったことが2点ある。
ひとつは、どう考えてもシローとアイナがお互いに好意を持つプロセス、期間が短すぎることだ。
連邦とジオン、それぞれ自分が所属する組織の主義主張について、あまり気にならないということはあると思う。
現代社会でも、会社員として自社の経営理念とかどうでもいいって人はいるだろうと思えば、まぁ分かる。
だがしかし、そうは言っても戦時中の敵と味方である。
2回たまたま遭難したような状況に陥ったからといって、恋愛にまで発展するだろうか?
2人とも精神的に未熟っぽいところがあるので、そんな2人だからこそそういう関係になった…とも考えられるが。
もうひとつは、シローの理想と現実の折り合いについてである。
シローはアイナとのふれあいを通して、敵であってもお互いに理解し合えるんだという考えになり、戦う以外の方法を模索するようになる。
だが、現実はそうはうまく運ばない。
味方の将校には笑われるし、ゲリラの村に食料を分けてもらいに来たジオンの兵士も救えない。
そんな現実を前にして、シローはどうするのか?というところで、もう一歩踏み込んだシローの考えが描ききれてないのが気になった。
理想はこうだ、でも現実はこうだ。ならばどうするか?…のうち、どうするか?の表現が弱いかなと感じた。
しかも、結局最後はギニアスを撃ち、相互理解を放棄してるように見える。
つまり、相互理解できない相手もいて、そういう相手には銃を向けるしかない…と、結局現実に立ち戻ってしまってる。
なんだか腑に落ちないと思ってしまわないか?
この2点以外は、概ね良作だとは思う。
限りなく現実論に、リアリティに徹するのも作品の方向性のひとつではあるが、必ずしもそうしなきゃいけないことはない。
理想とファンタジー、それを描けるからこそのフィクションなのだ。
…がしかし、甘っちょろいことばっかり言うようになる後半のシロー。
そこを好意的に受け止められるか?もしくは、ウザいやつだと嫌悪するか?
そこが本作の好き嫌いの分かれ目だと感じた。
ちなみにわたしは後者。大人になりすぎてしまったかな。
中高生のほうが楽しめる作品かもしれない。
演出
陸戦型ガンダムの戦闘シーンの描写が、重厚感とリアリティがあっていい。
本作で一番魅力的なポイントだと思う。
ロボット好きなら、この点で楽しめるだろう。
個人的には、砂漠の回で全体的に白っぽい色描写で砂漠感を表現してたのがなんだか印象的だった。
見てても砂漠の熱さがよく伝わった。
音楽
OPとEDの米倉涼子さんの曲が素晴らしくいい。
どちらもいい曲なのだが、個人的にはOPのほうが好きかな。
「嵐の中で輝いて その夢をあきらめないで」というのが、シローのことを歌ってるような気がしてる。
個人的に刺さったシーン
ひとつは、ビームサーベルでお湯を沸かすシーン。
ガンダムシリーズは数は多くても、ビームサーベルでお湯を沸かそうとするのはこの作品ぐらいではないだろうか。
少なくとも、自分は見たことがない。
もうひとつは、アイナが「もしノリスが死んだら、わたしがノリスを殺したんだ…!」と、自分の無力を嘆くシーンである。
シローと同じく、全体的に精神面の未熟さが目立つアイナだけど、少し大人の部分が見て取れるシーンだと思う。
まとめ
人間ドラマという面で考えると、かなり好みが分かれる作品だと思う。
多分、年をとるほどシローの理想論っぷりが鼻につく気がする。
一方で、ガンダムetcの戦闘シーンは迫力がある。
そっちだけを見るがために見る…というのもアリかな。