概要
Webページ:
TVアニメ『冴えない彼女の育てかた』公式サイト
丸戸史明氏のライトノベルが原作。
放送アニメが1期、2期と放送されたのち、先日から劇場版映画も公開中。
なお、本レビューでは、あくまで1期のみを対象とする。
人に勧められるか?
★★★☆☆ (5点中3点)
登場する女の子たちが可愛いだけのアニメ。
詳細は下記を読んでほしいが、つまりストーリーがおもしろくない。
ちなみに2期だと一気にストーリー的におもしろくなるのだが、なんで1期も同じように作らなかったのか?という印象だ。
もしや、2期にむけた長々としたフラグだったのだろうか。
まぁ基本的なストーリーが、ゲーム作りのためのメンバー集めで終わってしまうから、本番は2期でということか。
加えて、主人公の安芸倫也というキャラクターが好きになれない。
ハーレムアニメでよくあるような鈍感さが、鼻につくレベルなのだ。
さすがにちょっとイラッとする。
まぁ高校生だから…いやしかし、高校生だからこそ、あそこまであからさまだったら乗っかるものではないか?
ストーリー
オタク少年である安芸倫也は、バイトの途中で通った坂で、帽子を飛ばされた少女と出会う。
桜とその少女のシルエットから、美少女ゲームのインスピレーションを得た倫也は、ゲーム作りのためにメンバー集めに奔走し始める。
その過程で、坂で出会った少女が、同じクラスの女の子・加藤恵であることを知るのだった。
結論から書いてしまうと、ストーリー的には特に目立ったところやおもしろい部分はない。
ストーリーの大半は、ゲーム作りのためのメンバー集めと、その誘ったメンバーと主人公の過去のいざこざで終わる。
唯一、実際にゲーム作りに関係したエピソードは、霞ヶ丘詩羽のあげてきたプロットの修正くらいである。
ゲーム作りがテーマなのなら、もう少し実際にゲーム作りに関係するエピソードの割合を増やして欲しいものだ。
そして、その点に目を瞑ったとしても、そのストーリーの大半の部分がいまいちおもしろくない。
参加するメンバーは、加藤恵、澤村・スペンサー・英梨々、霞ヶ丘詩羽、氷堂美智留の4人だが…。
そのうち、加藤恵がサークル参加に本気になった理由もいまいち謎なのだが。
それ以上に、澤村・スペンサー・英梨々、霞ヶ丘詩羽の2人がサークルに参加した理由が、いまいち腑に落ちないのだ。
序盤であんだけ倫也が提出した企画書にダメ出しをしていたのに、いつの間にかなんだかんだで参加する流れになってるのだ。
つまるところ、説明と描写が足りない。
結局、どっちも倫也が好きだから参加したんだろ?と言われても仕方がない描写だった。
もう少しサークル参加のキッカケを丁寧に描写してもよかったのではないか。
そして、英梨々と倫也の過去の確執が明らかになるエピソードだ。
アレもまったく謎である。
結局のところ、英梨々が怒った理由は「倫也との大事な思い出の作品を他の女の子への布教に使われた挙句、その女の子のイラストをベタ褒めしたから(自分は褒められたことないのに)」。
そして、英梨々の創作のキッカケは「倫也との関係性をバカにした周囲の人間を見返したいから」。
うーん…英梨々というキャラが分からない。
そこまで倫也との関係性を重要視してるなら、どうして小学校から未だにギスギスしたままの状態なのだろうか?
もう少し、何かしらの行動を起こしててもいいんじゃないか?
加えて、英梨々の創作のモチベーションにおいて、本当にそこまで倫也が大きな部分を占めているのだろうか。
そんなのは最初期のキッカケにすぎなくて、そこまでイラストレータとして実力を身につけたのは、普通に「アニメが好きだから」のほうが大きいじゃないのか?
普段、接することが少ない人間をモチベーションの糧にするには、小学校から高校生というのは、どう考えても期間が長すぎる。
それでも素直になれない英梨々、ということなのか。
さすがに人間性がぶっ飛びすぎだろう…まぁまだ高校生だから仕方がない、のか?
とはいえ、倫也が「なぜ英梨々が怒ったのか分からない」のも納得してしまう。
これまでのことを考えれば、倫也には、英梨々の中でそこまで自分が大きな存在になってるとは露知らずだろう。
どちらにしても、本作品の中で圧倒的に好きになれない(意味がわからない)のは、この英梨々である。
ちなみに次は倫也だ。
これはもう、単純にハーレム鈍感ラノベ主人公であり、その鈍感さが鼻につくレベルだから。
あえて無視してるのならば、そんな描写があってもいいものだ。
それがあったら、もう少し見方が変わったんだけどな。
というように、ストーリー的にどうにもおもしろみの不足と気になるところが多すぎる。
なんでこれ売れてるんだろう?とも思った。
ではなぜ、こんな作品が人気があるのだろう?と考えると…単純に登場するヒロインがみんな可愛い、ところどころメタ発言やパロディがある、演出に力が入ってる…部分が大半を占めるのだろう。
ストーリーに期待して見ると肩透かしを食らう。
もしかして、原作はもう少し印象が変わるのか?
それにしても、美少女ゲームがオタク界隈の中でも斜陽ジャンルになりつつあるこのご時世だというのに、なぜこんなテーマで売れてるんだろう?
客層がどの年齢層なのか分からないが…ヒロインが可愛くて、メタとパロディがあって、演出がよければアニメは売れてしまうということなのだろうか?
わたしはまだそういうゲームをやる人間なのだが、他のファンはどう思っているのだろうか。
なお余談であるが、2期は1期と違って実際のゲーム制作がストーリーの大きな部分を占めることになる。
そのためか、ストーリーのおもしろさも段違いに上がる。
前置きで1クールも使うとは…いくらなんでも長すぎだろ。
演出
ストーリーのつまらなさを補うかのように力の入った演出。
そのおかげで、ヒロインの可愛さやギャグのおもしろさに拍車がかかっている。
個人的に特に好きなのは、美智留が倫也の家でギターを引き始めたときの演出。
倫也の元に音が届くとともに、ひとひらの桜の花びらが舞う。
近くにつれ、音も大きくなるが、桜の花びらの数も増える。
気づけば、倫也は美智留の弾く曲に惹かれていた…という寸法だ。
このアニメでは、桜の花びらがかなり重要なアイテムとしてしばしば登場するが、それを意識した、いい演出だと思う。
その他だと、ギャグをはじめとしたポイントポイントでカラートーンが変わる演出が特徴。
会話劇が多いこのアニメで、いいアクセントになってると思う。
総じて、演出がうまい。
音楽
曲としてはOPがけっこう好きだが、映像としてはEDのほうが好きだ。
桜の花びらと近い、パステルトーンの可愛らしい映像である。
やはり、こういう演出にはやたら力が入ってるアニメなんだよなぁ。
ちなみに劇伴は印象が薄いのでノーコメント。
個人的に刺さったシーン
まずひとつ、GW中のプロット作業に詰まった倫也が、例の坂で恵と会うシーンである。
正直、加藤恵はなんだかんだでだいぶ特殊なキャラクターだと思うのだが、その片鱗が見えるのがこのシーンである。
いくらなんでも人付き合いよすぎじゃないか…?
それはさておき、倫也が感じたインスピレーションを想起させるシーンには、やはり桜の花びらが舞うのだ。
続いて、六天馬モールで恵と英梨々が会話するシーンである。
ここまでかなり人付き合いがよく、そしてあれこれ言われてもあんまり動じてなさそうな雰囲気を出していたが、初めて怒りをあらわにするシーンでもある。
やはり、恵もちゃんとフツーの女の子なのだ。
最後が、先にも書いた、美智留が倫也の家でギターを引き始めた時のシーンである。
やはり、個人的にあの演出はけっこう好きだ。
まとめ
というわけで、キャラはとにかく可愛いし、演出もやたら力が入ってるし、メタ発言とパロディでおもしろい。
…個人的には、メタ発言とパロディ中心で笑いを取りに行くのは卑怯だと思うのだが。
だがしかし、ストーリー展開があんまりおもしろくないし、腑に落ちない部分が目立つのだ。
もうちょっと表現の仕方を変えて、ちゃんと描写や表現によって説明を入れていれば、おもしろいストーリーになったろうに。。。